【市民健康相談講座】「尿検査と血圧測定で元気に長生き」

豊明市民公開講演会

平成23年10月1日(土)午後2時30分?午後4時00分
豊明市文化会館小ホール
『 尿検査と血圧測定で元気に長生き 』
講師:藤田保健衛生大学医療科学部臨床工医学科 比企 能之 先生
司会:坂上 充志 先生(豊明クリニック院長・市民講演会企画運営委員)
※ 講演会の様子についてご紹介いたします

講演に先立ち、豊明医師会の会長 水野 雅夫 先生(みずのクリニック)から、挨拶がありました。
(以下、水野先生の挨拶内容です)
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(水野先生)
『ただ今ご紹介頂きました豊明市医師会の会長を務めさせて頂いております水野でございます。本日は当市民公開講座にお越しいただき有難うございます。本講座は当医師会の大事な事業の一つであり、市民の皆さんの健康増進に少しでも役に立てて頂くよう、年1回この文化会館小ホールにて開催してまいりました。
この市民公開講座のほかにも、小規模となりますが、市民健康講座を年2回、保健センターで開催しております。市民の皆さんの健康に関することで、身近な、普段から興味のあることについて担当の先生方が毎回智恵を出し合いテーマを決めてきました。
月日の経つのは早いもので、当市民公開講座は、今回で10回目を迎えることとなりました。いつもご参加の方が多く市民の方の健康への関心の高さにはいつも敬服しております。
今回は藤田保健衛生大学、医療科学部の元学部長で医療科学部、臨床工学科教授の比企能之先生よりご講演をして頂きます。

腎臓の病気で慢性腎炎というものがあります。その慢性腎炎の中で最も頻度の高いIg A腎炎というものがあります。
先生は慢性腎炎など腎疾患の患者さんの日常の診察のかたわら、Ig A腎炎の病因に関する基礎的研究をライフワークとされ、その研究においては世界をリードされているご高名な先生であります。
本日は先生の腎臓内科医という専門医の立場より、皆さんが日頃から健康診断やら、かかりつけの先生から、よく指摘される蛋白尿と高血圧についてわかりやすくお話していただけると思います。
血圧と蛋白尿から腎臓の病気だけでなく、体全体の調子がわかる、血圧、蛋白尿から心筋梗塞、脳卒中、などの怖い病気に進行していく危険性の度合いがわかる、日常生活においてどのようなことに注意をしたらよいか、などなど、目から鱗が落ちる、のようなすばらしいお話が聞けることと思います。
現在、慢性腎臓病 CKDと略しておりますが、この疾患郡が注目されております。みなさんもどこかで目にとめたり、お聞きになったりされたことがあると思います。
今、血液透析療法など透析を必要としている人が日本で約30万人と急速に増加しております。其の原因疾患がCKDであります。
透析患者さんを減らすには、腎機能障害を早期に発見し、その進行悪化をくい止めなければなりません。そのためにも、我々、医療提供する立場の医療機関が地域に密着し、実のある医療展開をしていく必要があると考える毎日です。
今日の比企先生のお話が、本日ご参加の皆さんにお役にたって頂けることを祈念して開会の挨拶とさせていただきます。』
※ 司会の坂上先生から、比企先生の紹介があり、講演が始まりました。
(以下、講演内容のサマリーです)
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(比企先生)
『 腎臓は老廃物を捨てるだけでなく、体の水分量、塩分などの電解質濃度を精密に調節しています。腎臓には細い動脈が糸がからみつくような構造で球状になった、糸球体と呼ばれる構造があります。ここでまず血液から水とともに老廃物を粗ごしします。ここで濾過されたもの(これは原尿と呼ばれます。)は尿細管に運ばれ、そこを通る過程で水分や塩分などの必要な物質は体内の量や濃度に応じて尿細管周囲の毛細血管へ再吸収され、体内もどります。このようにして私たちが毎日排泄する尿は作られているのです。ですから、みなさんも起床時(就寝中水分摂取していない)とか発汗や下痢などで、体の水分が少なくなると濃い尿となり量も減ることに気付かれていると思います。これは尿細管でこれを察知して水分の再吸収量を増やして体の水分量を確保しようとしているからです。
体の水分量や塩分濃度は、血圧に深く関係しています。腎臓病が進行して腎機能が低下していっても末期になるまで自覚症状はほとんど出ませんが、多くは尿に異常が出てきます。尿検査は苦痛を伴わず、いろいろ重要な情報を教えてくれます。中でも蛋白尿は腎機能が低下するよい指標となります。健康診断などでいつも蛋白尿を指摘されたら一度専門医を受診してください。
今まで、腎臓内科医は、様々な種類の腎炎や糖尿病などで腎機能が低下して透析療法の必要な末期腎不全に陥らせないことを主眼に治療してきました。近年、これら多くの原因疾患で腎機能が徐々に低下する病態を慢性腎臓病(chronic kidney disease略してCKD)として一括して呼ぶことが提唱されました。その視点で見ると、実は大変多くの人たちが慢性腎臓病つまり透析予備軍であり、さらに重要なことは慢性腎臓病が末期腎不全に至らなくとも、脳卒中や心筋梗塞などの心血管系疾患による死亡と深くかかわっていることが解ってきました。
これには図に示すように腎臓病と高血圧の間に悪循環が存在しているからです。つまり腎臓が障害されると腎臓に流れてくる血液量が少なくなります。すると腎臓から指令が飛んで、アンジオテンシンIIという物質が分泌されます。これ自身が血圧を強く上げる作用があり、さらに副腎を刺激してアルドステロンというホルモンを分泌させます。これは腎臓の尿細管に作用して水分と塩分の再吸収量を増加させます。すると血管内の水分量が増加する結果、高血圧となります。これが続くと、健康な状態では50mmHgに保たれていた糸球体で血液を濾過する圧(糸球体内圧と言います)が増加し、蛋白尿を引き起こし細動脈でできている糸球体を傷め、腎臓に流れる血液量が減ります。こうして腎の障害と高血圧の間に悪循環が成立し、腎機能低下はもとより高血圧が原因で命にかかわるような重大な事態を引き起こすのです。この悪循環は必ずしも腎炎などの一次的腎疾患がなくとも、体質や肥満などで高血圧をきたす、いわゆる本態性高血圧を放置すると成立してきてしまい、腎機能を低下させます。このような二次的な機序で起こってくる腎障害を腎臓専門医は腎硬化症といいますが、このために慢性腎臓病という範疇にはいってしまう方が非常に多くなっているのです。
いま前述の昇圧物質であるアンジオテンシンの作用を確実に抑える降圧薬が開発され、さかんにつかわれています。又この薬剤は全身血圧だけでなく、糸球体内圧も下げ、腎保護作用があることがわかっています。腎臓と高血圧の悪循環を断つことは可能となってきました。ただ薬だけでなく、塩分制限(まず一日6gを目安としましょう)や肥満対策、禁煙などの生活習慣を改善することが基本です。さあ、腎臓の状態を尿検査で知り、血圧を管理(自宅での血圧測定で135/85未満をまず目標としましょう)してこの悪循環を断ち、元気で長生きして有意義な人生を過ごしましょう。 』
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講演後、質疑応答を行いました。会場からお二人の質問と対する回答があり、市民公開講座を終了しました。
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(講演風景)
※ 公聴された市民の皆様、ありがとうございました。次回の市民公開講座にもご期待ください。
[ 豊明市医師会 豊明市民広報管理委員会 ]