【市民健康相談講座】「加齢黄斑変性の診断と治療」

市民健康相談講座「加齢黄斑変性の診断と治療」

日時:平成25年3月16日(土)午後2時~4時
場所:豊明市保健センター3階講義室

【テーマ】
(1)滲出性加齢黄斑変性の診断について
平岩眼科  院長  平岩 貴志 先生

(2)加齢黄斑変性の治療について
すえしげ眼科  院長  末繁 葉子 先生

司会の市民講演会企画運営委員会、河本晃市先生(河本整形外科 )が開会を宣言しました

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次に、豊明市医師会の隈部泰男先生(くまべ整形外科)から会場の皆様にご挨拶と医師会の市民講演会活動についての紹介がありました

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第1部は、平岩眼科 平岩貴志先生による「加齢黄斑変性の診断について」です

(以下、要約です)

 昔から眼球は、よくカメラに例えられます カメラといいましても、最近のデジカメではなくて、昔からのフィルムを使うカメラのことですが、そのカメラで言うところのレンズが水晶体と呼ばれるところです 一番奥にあるのがフィルムに相当する部分で網膜と言って眼の神経の集まりです さらにその網膜の中心部分を中心窩といいますが、中心窩を中心として半径3mm直径6mmの部分を黄斑部といいます。

 加齢黄斑変性とは、加齢に伴って、黄斑部分に様々な異常をきたした状態をいいます。多くは眼底出血が起こり、炎症などが生じ、網膜にむくみなどがおきます 放っておくと失明する危険性もあります。欧米諸国では失明原因の第一位を占めています(約170万人) 日本においても近年の急激な高齢者人口の増加や生活習慣の欧米化などに伴い、患者数が増加しています 現在、日本では失明原因の第4位となっています。

 この加齢黄斑変性がどれほど増えているかといいますと、1998年の0.9%から9年後の2007年には1.3%に増加していて、年齢別に見ると、50歳で0.2%、60歳で0.6%、70歳で2.4%、80歳以上では3.4%と明らかに増加し、高齢者に多く見られる疾患であることが示唆されます。

日本での患者さんは、約70万人と推定されています このような患者さん増加の原因には、人口の高齢化や生活様式(特に食生活)の欧米化と考えられています。危険因子の中で生活習慣として最も重要なものが喫煙です タバコを吸う人と吸わない人では約4倍も差があることがわかりました さらには加齢黄斑変性をもつ高齢者では、正常人と比較して、脳卒中や心臓疾患、アルツハイマー病の発症の危険性が高いことも言われています。

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それでは加齢黄斑変性のタイプ別分類をみていきます 大きく分けて滲出型(ウェットタイプ)と萎縮型(ドライタイプ)に分けられます。

滲出型とは、脈絡膜という網膜の外側から異常な血管「新生血管」ができ、網膜に浮腫(むくみ)や出血を起こし、急激に視力が低下します 発症早期から症状が出て、失明する人の大半がこのタイプで、日本人に多いと言われています 萎縮型とは、字のごとく黄斑が萎縮するタイプで、進行が遅い、もしくは進行が停止し、ゆっくりと視力が低下します 欧米人に多く、日本人に少ないと言われています。

症状としましては、①部分的、または中心が暗く見えます。②視界がゆがむ。③コントラストが低下する(ものが薄く見える)。④視力が急激に低下することがある などがあります。

ではこの加齢黄斑変性を診断する検査をお話します まずはアムスラーチャートという検査です 碁盤のようなマス目を片目ずつ見てチェックします 約30cm=新聞や読書と同じような距離でみます 加齢黄斑変性ですと線がぼやけて見えたり、中心がゆがんで見えたり、部分的に欠けて見えたりします 視力検査は、通常の視力検査です 先ほどの、ゆがんで見えたり等の症状が軽いときは、視力があまり下がっていないこともありますが、中心が暗かったり欠けて見えるときは、かなり視力が下がっていることもあります 通常は、両眼でモノを見ていますので、片目が正常なときは病気に気づくことが遅れることがあります 眼底検査、眼底写真を撮影することにより、よりはっきりします さらに最近では治療効果判定もあわせて、OCTという検査が非常に有用です また造影検査を行って病気の拡がりや新生血管の大きさ、場所などを確認します。

第2部は、すえしげ眼科、末繁葉子先生による「加齢黄斑変性の診断について」です。

(以下、要約です)

加齢黄斑変性は大きく滲出型加齢黄斑変性と萎縮型加齢黄斑変性に分けられます このうち、治療の対象となるのは滲出型加齢黄斑変性です。

主に行われている治療法は抗血管新生薬療法、光線力学的療法とレーザー光凝固術ですが、これらのうち、最近よく行われている治療法が抗血管新生薬療法です。

抗血管新生薬療法は、導入期として月に1回ずつ3回続けて硝子体内に薬剤を注入し、その後は、維持期として診察と検査の結果で必要な場合に追加投与するというものです 滲出型加齢黄斑変性の病態や単独治療で効果がみられない場合などはこれらの治療法を組み合わせて行うこともあります。

滲出型加齢黄斑変性は放置すれば進行により視力が低下していくため、継続的な経過観察と治療が必要です。

(写真4:末繁先生)

この後、活発な質疑応答があり、講演会を終了しました

(写真5:質疑応答風景)

出席いただいた皆様、ありがとうございました

次年度の市民講演会にも是非ご参加ください

(豊明市民広報管理委員会)